地名調査の短いようで長い道。(3)

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まだまだ資料編。

●東京市町名沿革史 新旧対照地名(東京市、竜渓書舎) 1995

原本は昭和13年に上下巻が刊行されたもので、区名ごとに地名の由来等を解説している。見ておいても損のない本だが、本編は町名の読みも不記載なのでここでは扱わない。その後、昭和49年に明治文献刊行でリメイクされ、さらに平成7年に上記のように復刻された。この復刻版には資料編として一冊独立して住居表示前後の地名の変遷がまとまっており、前回紹介した東京新地図(読売新聞社)と同じ形式で書いてある。

すばらしい......と言いたいところだが、これも満足足りえる資料ではない。「東京新地図の資料をもとに、それ以降の実施分について記述を加え、改訂した」と昭和49年度版にあり、「平成元年(?) までの実施分についても増補」と平成7年版にある。

しかし、昭和49年度の追加の時点で、抜けがあったり、同時期に住居表示された地名が全て一つにまとめられていたりと、資料の質としてはあまり高くない。平成元年版の増補に至っては、欄外に「(地名)は昭和xx年に住居表示」と書いてあるだけ。しかもそれですら抜けがあり、これはひどい

●国土行政区画総覧(国土地理協会) --

上の結果に傷心して図書館をさまよっていたときに偶然見つけた書物。

http://www.kokudo.or.jp/book/sub/souran.pdf

地名・旧町名が完全に1対1で記載されており、さらには読みと住居表示の実施状況まで分かる優れものである。例規集で見られるような加除式(バインダで綴じられていて、必要に応じて差し替えていく形式の本)である。住居表示の実施日付については分からないものの、98%の穴までは埋まったとみて差し支えないだろう。

ただ、この旧住所の欄も不思議なところがあり、書き方からすると明らかに自治省告示を元ネタにしていると思われるのだが、告示と明らかにズレているものが散見される。全体の5%程度だろうか。

例えば、江東区東陽三丁目(昭和42年7月1日実施)

自治省告示...深川東陽町1、深川東陽町2、深川東陽町3、深川平井町1、深川平井町2、深川平井町3

この本...深川東陽町1、深川東陽町2

例えば新宿区の市谷地区の細かい町ごとの住居表示については、住居表示の際に隣接町との町域調整を行っているはずなのだが、「国土行政区画総覧」には旧町名としてその町の名しか示されていない。占める割合がわずかな旧町名に関しては記載しないのかと思っていたが、全体を通じてみるとそうでもないようで、記載されているものについてはしっかり載っている。

逆に、こちらにしか載っていない旧町名もあったりするため、最終的な判断は実際に地図を見て判断するしかなさそうだ。

ということで、クロスチェック用にありがたく使わせてもらうことにする。自治省告示自体が誤植している場合もあるので、こういった複数の参考文献が重要そうだ。

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ここまで来ると、98%は終了したようなものだが、細かい不明点はいくつか残る。

★住居表示以外の変更。たとえば、近年だと埋立地の編入状況は実はまとまった資料がない。特に江東区は住居表示以外の区域(若洲、青海、有明etc.)の編入を少しずつ行ってきたため、編入状況が不明。

★住居表示に関係ない、昭和30年代の町名整理。渋谷区の幡ヶ谷・本町や、練馬区の小竹町、板橋区の大和町・熊野町といった地名はこのときに整理・新設されているが、細かい日付がよくわからない。

上2点については、各区の区史で触れられている場合もあるので、とりあえず調べてみることにする。江東区の分については江東区報でさかのぼって調べる必要あり。

★同じ町名に対して何回か追加で住居表示を行った場合の実施状況。

住居表示が長い期間にまたがる江戸川区・足立区では何回か見られる。各区の住居表示の案内図を見るしかなさそう。

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●東京都公報(東京都の告示)

地名の変更については、本当はここまで見る必要があるが、さすがにデジタル化されていないので目録を繰って毎年度のものを見る必要があり、相当時間がかかりそうなので継続課題。

 

ということで、何事も最後までもれなく調べるのは大変というお話。

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