2010年6月アーカイブ

今日は京急1000形電車の最終日だった。いつの間にか8連運用がなくなり、普通運用でしか見かけることがなくなっていったが、どうも長い間お世話になりました。

ということで、前の続き。
ダイヤ改正後の平均所要時間テーブルを算出してみたが、それに対応するダイヤ改正前の平均所要時間テーブルを作り、貼り付けてみた(リンク)。合っているかどうかはいまひとつ自信がないが、後で必要があれば見直したい。

赤字は悪化部分、黒字(青字)は良化部分となる。また、そもそもの平均所要時間の誤差が最大1分程度あることや、スピードアップ・ダウン(たとえば、天空橋~羽田空港はダイヤ改正後は国際線ターミナル駅の開業を見越した所要時間となっているため、1分程度長めに取られている。逆に、蒲田→品川の上り快特はスピードアップしている)による所要時間変更もあるため、平均で2.5分までの所要時間の増減は大きくは扱わず、それを超える増減があったところを、悪化は赤色地、良化は青色地で示した。

一見すると赤字/赤地が多いが、その中身を見ていこう。

・快特停車駅間(八景を除く)はほぼ増減がない。これは、快特10分間隔というのが堅持されているので、増減するポイントがないためだろう。
・全駅から久里浜以南が悪化している。これは、新ダイヤでは久里浜以南の交換や待ち時間が増えて所要時間が延びているため。

・快特駅(品川、蒲田、川崎、横浜、文庫、横須賀、堀ノ内~久里浜)から発、もしくは快特駅着となる移動については、一部の普通停車駅を除き、大幅に悪化したケースは少ない。
→それだけに、北品川・新馬場・生麦~新子安・黄金町・屏風浦・富岡のように、対快特停車駅の移動が悪化している駅は大きな不満になるだろう。

・品川~蒲田の途中普通駅からの乗車は軒並み大幅に悪化している。先ほどの項で述べた平和島のダブル退避で利便性が非常に悪くなっているため。特に、品川~蒲田から川崎~横浜への小駅移動は悲惨な悪化具合となっている。

・羽田空港は全駅で移動が悪化。国際線ターミナル駅による時間増を1分差し引いたとしても、品川・青物横丁・空港線内各駅・新町・八景を除き平均所要が基準を下回って悪化している。エア快の蒲田通過とエア急の鈍足効果が効いていると思われる。特にエア快の通過は痛い。

・ではエア急はどのような良い効果があるかと見ると、鶴見・仲木戸・新町の利便性が改善されていることと、空港線小駅→蒲田以南の移動が改善されているところだろう。
→逆に、横浜以南では、日ノ出町・井土ヶ谷・弘明寺・杉田・能見台の急行各停車駅は大きな改善効果か見られない。
→むしろ、黄金町・屏風浦・富岡の赤地(大幅悪化)が目立つ結果となっている。この辺りにおいて、最も大きな需要である横浜→各駅の移動が悪化した駅が多いのもマイナスポイント。横浜→屏風浦・富岡の利用客は少しかわいそう。

・八景の快特停車は効果てきめんで、ほぼ全駅で大きな効果を挙げている。特に、逗子線各線から八景以南への移動は非常に接続が良くなっており、ここに停車させた意義は大きいと見るべきだろう。

とりあえず雑感としては、こんな感じ。

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ここで、その駅の悪化評価値(下り方面)として、平均所要時間の変化値を平均したものを計算しよう。ある駅の下り方面の悪化平均値は、(∑(n駅→ある駅所要時間悪化値)+∑(ある駅→n駅の所要時間悪化値))÷駅数で求められる。

本当は、その駅間を移動する旅客数(ODペア)に応じて重み付けをする必要がある。たとえば、A駅→B駅は10万人、A駅→C駅は1万人の移動があったとしたら、A駅→B駅の所要時間の変化はA駅→C駅の単純に言えば10倍価値があると見なせるが、ODペアが手元になく、全区間の和をとった平均でも簡単なトレンドは見えてくるため、とりあえず計算してみよう。

良化した駅(平均1分以上短縮)は6駅。多い順に新逗子・神武寺・六浦・八景。というか全部逗子線の駅......。次いで大鳥居・糀谷・神奈川新町・鶴見と続く。空港線は接続改善で良化しているが、上りの品川方面は接続でかなり悪い部分があるため、順位が変動しそうである。
悪化した駅(平均1分以上延長)は24駅。多い順に北品川・新馬場・羽田空港・新子安
子安・生麦・三崎口・神奈川・三浦海岸・長沢・津久井浜・花月園前・八丁畷・黄金町・大森町。見事に普通駅ばかり並んでいる。合間合間に前述の久里浜以南が入る感じ。

こうしてみると、久里浜以南や悪化や逗子線の改善を差し引いたとしても、一言で言えば「急行停車駅・八景を少し優遇して、普通停車駅を大幅に悪化させ、自線内から羽田空港への速達性を消したダイヤ改正。なお快特相互駅間は大して変更なし」と言えるような気がする。つまるところプラスとマイナスが釣り合っていない。
もちろん改善できるところや、ムリなところが混在しているとは思うが、ここでは改善方法についてまでは考慮の対象外としたい。

上りダイヤを同様に評価することで、より正確に評価できると思うが、とりあえず今回はここまで。

(2)のつづき。

 各駅間の平均所要時間表を作ってみた。とりあえず下り。
 ......と1行では書いてはみたものの、計算上でバグが色々と出てきたために修正しまくったおかげで時間がかかってしまった。間違ってなければいいが。

 あまりにも巨大な表なのでリンクを貼っておく

 しかし、これだけでは絶対的に長いか短いかが分からないので、ダイヤ改正前と比較して悪化したか改善したかを見る必要がある。もうひとつ表を作らねばならないとは......。

 この表単独で分かることと言えば、快特停車駅ひとつ前への移動は思った通りヒサンな状況ということが分かるくらいだ。たとえば、品川→梅屋敷は平均23分に比べて品川→京急蒲田11分となっているため、京急蒲田まで飛んで1駅折り返し乗車をしたほうが、有利な場合が多いことが分かる。品川~京急川崎の各駅→仲木戸も同様。これが、能見台や弘明寺、汐入だとそこまで酷くない。優等の追い抜かれ回数が少ないことや急行停車駅ということがあり、時間差がそこまで生じないためだろう。

 もう一点、有効列車間隔について調べてみよう。京急は20分サイクルを採用しているが、快特は1サイクルに2本あり、本線の快特・普通の接続については10分サイクルを繰り返すため、基本的に各駅間の移動は最低でも20分に2回以上の最短移動のチャンスがあるはずだ。しかし残念ながらそうなっていない駅がある。

★有効列車が20分間隔の区間

●北品川~平和島の各駅→神奈川新町以遠の各駅、糀谷~羽田空港の各駅

 下り方面で見つかったのはここだけであるが、これらの駅の下り方面の利用はご愁傷様というほかない。
 北品川駅発で考えると、普通は10/30/50分発・19/39/59分の繰り返しとなる。10分発の普通は鮫洲で後続の本線快特を退避し、さらに平和島でエア快・もう1本後の本線快特をダブル退避するという鈍足っぷりなので、次に優等に乗り継げる京急蒲田着は31分着となる。ここから乗り継げるのは、羽田空港方面は38分の品川からのエア急※、本線快特は8分も待たされた挙句に39分の快特となる。
※31分に逗子からのエア急が発車となるが、ホームがそもそも違う階なので乗り継げない。以前のダイヤであれば平面乗り継ぎできていた接続のはずだが、さすがに今はムリだろう。

 19分発の普通は、鮫洲で後続の本線快特を退避するものの、平和島で羽田空港行きのエア急に接続するため、38分に京急蒲田駅着となる。よく見ると、10分発の普通と接続する電車が同じになっているため、10分発の普通は有効列車としては使えないことが分かる。なお、子安までは10分初の普通に乗り続けることで先着できるが、神奈川新町以遠は蒲田で快特乗り換え(+必要に応じて川崎でエア急乗り換え)とすることで、後の列車が先着する。
 これらの条件は北品川~平和島の各駅で共通のため、これらの駅を発車する場合は全て同じ結果となる。

 改正前のダイヤだと20分穴が出てくるパターンはなかったはず(あったらすみません)なので、明らかにこの部分はイケてない。平和島に羽田空港行きエア快を停めて普通からの接続を受ければ理論上は解消するが、現実解ではないだろう。先行普通蒲田で普通が退避できるようになれば、この11分発の普通は蒲田まで逃げ切って本線快特と接続することで改善されるので、下り高架線の完成を期待するしかなさそうだ。
 ちなみに、蒲田退避時はエア快も脇を通過するため、蒲田に停めることで羽田空港への20分穴が解消する。
 
★有効列車が16分以上の区間

 いくら「20分に2回の移動チャンスがあります」と言っても、16分4分や17分3分という間隔ではありがたみがない。20分に1本しかないのとあまり変わらないためだ。
 そういうパターンを探してみると......
●品川→大森町・梅屋敷(19分1分)
●青物横丁→大森町・梅屋敷・蒲田・雑色~子安の各駅(17分3分)
...これらは、上述の通り、平和島のダブル退避(接続なし)とエア急が20分に1本しかないことによるもの。

●鶴見→井土ヶ谷以遠の各駅(17分3分)
●生麦→屏風浦以遠の各駅(16分4分)
●黄金町→八景以遠の各駅(17分3分)
...この区間は普通が20分に3本あるが、間隔の偏りや南太田での普通の急行・快特ダブル退避(接続なし)が悪さをしている模様。

●屏風浦・富岡→六浦・神武寺・新逗子の各駅(17分3分)
...エア急の通過駅が割を食った格好に。新逗子行きのエア急行が通過してしまうため、残る普通と新逗子行きの連絡がよろしくないようだ。

ということで、改正前のダイヤとの平均所要時間を比較してみよう。つづく。

(1)のつづき。

 さて、ダイヤをおこがましくも評価すると書いてみたが、どういう観点で評価すればいいだろうか。既存の研究※では、乗客はそれぞれの「コスト(不効用)」が最も小さくなるように行動するというモデルが提唱されている。具体的には、A駅からB駅への「コスト」は、所要時間・乗り換え回数・混雑率をそれぞれ仮想的な時間に変換して和をとる方法で計算されている。

※利用者均衡配分法による通勤列車運行計画の利用者便益評価, 家田仁・赤松隆・高木淳・畠中秀人,土木計画学研究論文集 No.6, '88年11月, pp.177-184 あたりが有名だろう

 このモデルは、混雑率が高かったり、あまりにも乗り換えが不便や回数の多いルートについては、少々所要時間が短くても選択されない可能性について指摘している。ただし、ここでは混雑率を指標に入れることは、実際の観察etc.が必要で困難なことや、京急は快特集中主義に現状なっており、普通と優等の速度差が激しいため、追い抜かれる普通を乗り通す客の総数は少ないと見なし、コストとして「所要時間」を評価の対象とすることとする。

※横浜~上大岡のように、南太田で退避する普通(後続の快特が早く着く場合)にあえて乗る場合もあるだろうが、ここでは有効列車に含めないこととする

 ここで書いた「所要時間」とは、A駅に到着してから目的のB駅で降りるまでの乗車時間・待ち時間・乗り換え時間を全て含めたものとする。ここで問題になるのがA駅(出発駅)に到着してから、目的の電車に乗るまでの待ち時間をどうカウントするかだが、出発駅に到着する乗客は一様分布する(ランダムに到着する)ものとする。
 
 到着モデルについても先ほどの論文やその他の乗客流動やダイヤ評価関連の論文でも言及されているが、乗り換えに特化し、なおかつ特定の時刻にスポット的に大量の乗客が現れるような駅は京急線内では考えづらく、巨視的に見ればこのモデルを採用しても特に問題ないと考えられる。
 横浜や品川といった乗り換え客が多数いる駅は、京急に乗り換える元の電車の候補がたくさんあり、その駅からの乗客も多いため、ならせば均一に乗客が現れると見なしても差し支えないだろう。

※泉岳寺は直通客が多くを占めると考えられるが、泉岳寺以遠からの乗客を仮想的に一駅にまとめ、特別扱いすることで問題ないと思われる。今回はそこの計算は特にしておらず、各駅から純粋に改札を通って乗車する乗客を対象としている。

 また、乗客は駅に到着した時点で最速の乗り継ぎ(ただし京急線内に限定)ルートで目的駅に到着するものとし、折り返し乗車は認めない(品川→蒲田→梅屋敷のような折り返しはたとえ最速でも考慮しない)ものとする。Webサービスの乗換案内で検索したときに最速のルートとして提示されたものを選んで乗車するような感じになる。

 なお、これを考えると、各駅に何分に来たときの最速パターンというのを計算する必要がある。たとえば、品川から羽田空港の間は、12:02~12:07の間に来たら07分発のエア急で、12:07~16の間は16分発のエア快特、12:16~22の間は22分発のSH快特に乗って蒲田で乗り換えが最速というように。
 これはグラフ理論(ノード/リンク構造)でダイヤグラムを表現して最短経路探索をすることで計算可能となるが、本筋でないので省略する。

 なお、ダイヤの情報としては「えきから時刻表」「東京時刻表」を用いる。業務用のダイヤグラムでないため分単位に丸められているかげ、±30秒の誤差があると考えれば、所要時間の誤差は発車駅・到着駅を合わせて最大で1分になる。

 以上より、たとえば品川から羽田空港に当てはめると、
・12:02のSH快特→乗車所要時間20分(蒲田乗換え)
・12:07のエア急→乗車所要時間22分
・12:16のエア快→乗車所要時間17分
・12:22のSH快特→乗車所要時間20分(蒲田乗換え)
     :
の20分サイクルが繰り返す構造となっている。京急は平日日中と、土休日は早朝深夜を除き同じサイクルが繰り返すため、この繰り返しが続くと見なして所要時間が計算できる。

 このとき、品川駅への乗客の到着時間tと、その時間に到着したときの羽田空港までの所要時間をf(t)とすると、以下の図に示すような関係になる。
#すんげーきたないグラフですがご容赦ください。k_100616_1.png

 先ほど、出発駅の乗客は一様分布に到着すると仮定したため、平均所要時間は∫f(t)dt / 20と計算できる。いきなり積分記号が出てきたが、そんなに難しいことではなく、上のグラフを同一面積のまま横幅20の長方形にしたとき(下図の赤い四角形)の縦軸の長さを求めていることに等しい。その縦軸の長さが平均所要時間となる。この場合は平均所要時間は22.7分となる。k_100616_2.png

 さて、これらの条件をもとに、各駅間の平均所要時間を計算してみることにする。
(続く)



 京急の先月のダイヤ改正が一部で不評らしい。らしい、と書いたが、自分も新ダイヤはメリットよりもデメリットの方が上回っているイケてないダイヤだと思っている。

 今回のダイヤ改正は、京急蒲田駅の上り線高架化に伴うもので、以下の3点が主なトピックとなっている。
・エアポート快特を品川~羽田空港ノンストップとして京急蒲田を通過
・エアポート急行を新たに羽田空港~新逗子に運転、引き換えに羽田空港~(特急)~川崎~(快特併結)~文庫~(普通)~浦賀という4連の運転を取りやめ
・快特の金沢八景停車

 つまり、平日昼間20分サイクルで以下のように変化することになる。なお、休日は品川~文庫が12連で文庫から普通になる運用が出るが、基本の骨格は同じ。
(改正前)
1. A快特...泉岳寺~三崎口
2. SH快特...都営線直通~泉岳寺~三崎口
3. エア快特...都営線直通~泉岳寺~羽田空港
4. 急行...都営線直通~泉岳寺~羽田空港
5. 普通...品川~浦賀、品川~新逗子、川崎~浦賀、川崎~文庫
6. D特...羽田空港~(特急)~川崎~(A快特に併結)~文庫~(普通)~浦賀

(改正後)
1. A快特...泉岳寺~三崎口
2. SH快特...都営線直通~泉岳寺~三崎口
3. エア快特...都営線直通~泉岳寺~羽田空港 [蒲田通過]
4. エア急行...都営線直通~泉岳寺~羽田空港
5. エア急行...羽田空港~新逗子
6. 普通...品川~浦賀、品川~新逗子、川崎~浦賀

 さて、改正トピックの3点のうち、上2点はデメリットが目立つように感じる。
・エアポート快特のノンストップ化については、空港利用客が直行で行けるようになるメリットが出たが、それと引き換えに品川以外の各駅~蒲田乗換え~羽田空港の利便性が低下
※通過するしないで大田区との間でモメたニュースが一時期世間を賑わせたが、蒲田からの乗客が不便になるというよりも、こちらの方がよっぽどイケてないのではと思った

・退避パターンの変化(快特のスジを立てているようだ)により、北品川・新馬場~横浜以遠など、乗車チャンスが20分に1回になってしまうパターンがいくつか発生

・エア急については一言でいえば中途半端な種別。たぶん、快特に一極集中する混雑状況を平準化する目的もあったのかもしれないが......
・最も乗客の多い横浜→金沢文庫では急行が先着せず、上大岡で後続の快特退避をするため結局快特に集中しやすくなる
・上りは川崎で後続の快特を退避するため、横浜方面から見るとエア急と快特の時間差が大きく、相変わらず快特とエア急の混雑度合の差が激しい
※今までの経緯上、乗客は快特集中主義になっていると思うが、それを覆すだけのメリットを京急が提示できていないと思われる

・快特で行けるところまで行って直後の普通に乗り換えれば最速、というパターンが崩れるところが発生し最速パターンが複雑化
※たとえば、A快特で横浜に降りて直後の普通に乗ると南太田で後続の急行・快特をダブル退避するため、井土ヶ谷・弘明寺は後続の急行が先着etc...

・退避増加と急行格上げによる普通のみ停車駅の冷遇度上昇

いくつか改善された点もある(夕方~夜の久里浜の長時間停車の改善は個人的には嬉しい)のだが、不満ばっかり書いても仕方ないので、とりあえず「どの程度悪化したのか」を定量的に評価してみることにする。(続く)

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