地名調査の短いようで長い道。

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ここ1ヶ月くらい、23区の地名を専門的に調べるハメになっている。

経緯はと言えば、そもそもここ5年くらいのライフワークで都営バスの停留所の網羅データベースをこつこつと作っているのだが、まずは昔の町名の読みが分からない。「町」ひとつとっても「まち」と「ちょう」が混在している。例えば千代田区の小川町は「おがわまち」で淡路町は「あわじちょう」だ。これらは地下鉄の駅名にもなっているので分かりやすいが、かつては1400近くあった23区の町名一つ一つを把握しておいたほうが何かと便利なためである。

そして、それと同時に、少なくとも戦後の変遷は調べる必要が出てきた。そのまま住所を名乗っている停留所は多いが、東京23区はかの悪名高き? 地番方式の住所からの住居表示によって、旧来の地名がほとんど失われてしまったため、停留所もそれに合わせて多くが変更されたためである。

地番と住居表示については、

・地番・住居表示入門http://www21.ocn.ne.jp/~kobataka/tokyo/chiban.html

・住居表示と地番とは違うものなの? http://uub.jp/arc/arc.cgi?N=459

あたりを参照のこと。

--おまけ本文--

もともと住居表示は、分かりやすい番地表示の方式をとることで、生活する上での利便性を高めるものとして考えられたものだとは思うが、東京ではそれと同時に町名の大整理を同時に行ったために批判が巻き起こることになった。最初に住居表示に伴う地名整理がモデルケースとして行われたのは昭和36年10月31日の荒川区荒川(一丁目~八丁目)で、本格的な実施は、昭和38年2月1日の練馬区桜台(四丁目~六丁目)・練馬(一丁目~四丁目)を皮切りに、多くの地域で実施されていった。昭和40年代前半までが実施のピークで、ここまでで三分の二近くの地域で住居表示が実施された。

(※都市化に伴う住居表示を伴わない地番整理や地名新設はそれ以前から行われていた。例えば渋谷区の幡ヶ谷・初台地区の町名整理や、板橋区の板橋町の町名分割で誕生した大和町・中板橋・大山町・熊野町といった変更は昭和30年代前半から行われている)

例えば、港区赤坂は一丁目~九丁目まであるが、赤坂溜池町・赤坂田町・赤坂榎坂町・赤坂霊南坂町・赤坂溜池町・赤坂新町・赤坂福吉町・赤坂丹後町・赤坂表町・赤坂一ツ木町・赤坂檜町......といった町名が姿を消していった。

他にも、地元の意見対立で抽象的な地名を作ってしまったり(大田区中央、足立区足立...)、旧地名が当用漢字にないという理由で変更されたり(墨田区竪川→立川、墨田区厩橋→本所)、東西南北などに地名をつけただけの無味乾燥な地名にしたり(台東区北上野、大田区新蒲田...)と、初期の住居表示に伴う地名変更はムリヤリなものも結構存在する。

昭和40年代中ごろに差し掛かると、旧来の地名を消し去ることへの抵抗も大きくなり、区ごとに実施率の差か出てきた。台東区・中野区・品川区・文京区のように早々と全域で住居表示を終えた区もあれば、千代田区・新宿区・練馬区・足立区のように実施率がやたらと低い区も存在した。これは、住民が反対している場合に強引に施行するのはなじまないということもあり、また昭和42年の住居表示法改正で従来の町名を尊重する条項が盛り込まれたこともあったためだろう。

その後の自治省通達で、「住民の意思を尊重し、みだりに従来の町の区域を改変したり、町名を全面的に変更することがないよう市町村を指導してほしい」という文が出るに至って、従来の方針は大きく見直されることになる。

昭和40年代後半以降の住居表示の方針は区によって異なる。旧来の細かい地名を生かしつつ住居表示を完了した中央区日本橋地区や板橋区や足立区千住地区、そもそも住居表示をストップさせた千代田区神田地区、できるところから少しずつ旧来の地名のまま住居表示を行う新宿区の市谷・牛込地区、あくまで従来型の地名整理を断行して歯抜けのように反対に遭った地域だけ住居表示未実施のまま残る江戸川区※など、各者各様になっている。現在は、住居表示未実施地域が残るのは千代田区・新宿区・江東区(港湾部のみ)・足立区・江戸川区となっている。

※たとえば江戸川区二之江町http://www.mapion.co.jp/c/f?nl=35/40/45.627&el=139/52/34.737&scl=25000&uc=1&grp=all&coco=35/40/45.627,139/52/34.737&icon=home,,,,,など。整理された街区符号の中で、東京ではあまり見られなくなった4桁の地番がむき出しになっている姿は、ある種異様とも言える。

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ということで、現在の23区の地名は新しい住居表示の地名と古い地名が混在している。細かい「~町」でも住居表示が実施されているものもあり、正確に追うにはかなり腰を入れて調べないとダメなことに気がついてしまったため、調べるハメになった。

年月日と、どの町が町名変更されたかを調べるだけである。地名は何せ研究している人も多いし、都営バスの資料探しよりは楽なはずだ。しかも東京の地名なんていえば研究者も多いはずで、こんなのは絶対に誰かが資料化しているだろう......と思いきや、なかなか適当なのが見つからない。(続く)

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