(1)の続き
さて、住居表示の歴史を探し当てようと思ったときに、手元にあったのがこれ。
●東京新地図(読売新聞社) 1968
住居表示の頃に、読売新聞に新地名単位で地名にまつわる話や旧名について取り上げたもの。巻末付録に住居表示の施行年月日と、丁目単位で旧町名が表示されるという垂涎もののデータがある。例えばこんな感じ。
外神田一丁目 | 神田花房町、神田旅籠町2、神田旅籠町3、神田仲町1、神田仲町2の各全部、 神田花田町、神田花岡町、神田佐久間町1、神田相生町の各一部 |
昭和39年 12月1日 | |
外神田二丁目 | 神田松住町、神田台所町、神田宮本町の各全部、神田同朋町の各一部 | ||
外神田三丁目 | 神田旅籠町1、神田金沢町、神田末広町の各全部 | ||
外神田四丁目 | 神田田代町、神田松富町、神田山本町の各全部、 神田練塀町、神田花田町、神田相生町の各一部 | ||
外神田五丁目 | 神田栄町、神田元佐久間町、神田亀住町の各全部 | ||
外神田六丁目 | 神田五軒町の全部、神田同朋町の一部 |
しかし残念ながら、この本が出版されたのは昭和43年。住居表示の実施が速い区では終わりかけだったが、全体で見れば町名変更もまだ道半ばで、これ以降の施行状況については不明である。
(※余談だが、同じように新聞社連載で東京の地名について取り上げたものとして、「東京地名考」(朝日新聞社)、1986がある。東京の地名を色々と見たい人にはどちらもお勧め。住居表示に伴う地名整理について、東京地名考のほうは否定的な観が強く、2つの本が出た時代の差を感じさせられる)
●最新東京都地図要覧/新東京都地図要覧(国際地学協会)
もう一つ手元にあったのがこれ。毎年出版されていたもので、各区・市の一枚ものの地図が綴じ込まれている巨大な上製本(と言えばいいのか)の地図集だ。この分野では人文社の東京都地図地名総覧が有名だろう。図書館の参考図書コーナーやかつての事務所なかには必ず常備されているイメージのやつだ。
家にあったのは昭和44年度版だが、これの巻頭にはオマケとして当時で言うところの近年の住居表示実施や町名変更の実施状況が記載されている。ありがたいのは住居表示に関係しない町名変更についても網羅されていることだろう。
とりあえず都立図書館の23区横断検索(超便利)で調べて、新宿区歴史博物館や大田区の中央図書館で調べてみる。しかし途中から担当者が変わったのか、昭和45年度からの記載の質がいきなり落ちている。
新宿一~四丁目 | 新宿一丁目、新宿二丁目、新宿三丁目、新宿四丁目、花園町の各全部、 角筈一丁目の一部 |
昭和48年 1月1日 |
もうこんなレベルで目も当てられない。しかも後から調べて分かったが、旧町名の記載も間違いが多くなっているため実用にはとても適さない。とりあえず「いつ実施したか」は分かるので、それ用の資料として使うことにする。後で昭和35年度以降の全版が都立中央図書館に所蔵されているためにとりあえず調べにいったが、昭和50年度から先は版型が変わるとともに町名変更一覧のページがなくなっていた。ショック!
●官報 自治省告示
ということで次に探し当てたのはこれ。上の住居表示の書き方には当然ながら典拠があるわけで、原典は官報の告示である。(官報でも同じようなレイアウトの書き方になっている)。住居表示関連は実施された後に必ず告示されるため、これを調べれば一網打尽! しかも官報は昭和22年の過去から電子化されてデータベースになっているから(全文検索は有料サービス。ただし図書館等で利用者に無料提供しているところもあり)、住居表示で検索をかければ楽々!
......そう思っていた時代が俺にもありました(AA略)。
確かにかなりの部分は官報検索で(東京都 and 住居表示、種類を告示に限定)引っかかる。8割以上の穴は埋まったが、どうも昭和46年~52年度あたりの実施状況が全く引っかからない。電子化するときのテキスト入力ミスか(たまにある。「東京都」でひっかからないと思っていたら「京都」になっていたことがあった。なめんな)と思ったが、町名を直接入れても出てこない。そこだけ都合よくデータ化されていないのだろうが、あんまりな仕打ちである。紙版の官報をえんえんとめくって自治省告示の部分だけ抜き出してくることも考えたが、さすがに時間がかかりすぎるので却下。
●住居表示新旧対照図(各区作成)
さらに、施行状況の調査補助として、こんな資料もある。住居表示を施行するたびに、区では旧・新の住所対応を地図で示した図面を発行している。たいていはその区の図書館+都立中央図書館に眠っているので、それを調べればいい。といってもそれぞれの図書館に行くわけではなく、図書館の検索を使えば、それぞれの資料のタイトルに実施日や実施地域が記載されているので、調べるだけで分かる。便利な時代だ。つい2~3年前まで大田区だけネット上での蔵書検索サービスがなかったが、今では全区ともネットからの蔵書検索が可能となっている。
●
▲こんな感じ。
これを元に、各区の住居表示に関する実施状況がかなりの精度で分かる。
●ネット上の資料
区によっては、住居表示の経緯や実施状況を記載しているものもある。たとえば千代田区は実施状況や、これまでの施行日を日付までしっかりと記載しており、23区の中でもかなりクオリティーは高い(http://www.city.chiyoda.lg.jp/service/00011/d0001180.html)。
あとは、東京の23区の地名を扱ったサイトとしては検索で引っかかる有名所としては「東京の地名の由来」(http://www.geocities.jp/pccwm336/index.html)がある。各区の地名ごとに解説文を付けており、住居表示実施日も記載されているなど、見ようによっては一級の資料とも言えるが、参考文献や典拠がほとんど分からないことや(自分のサイトも参考文献をせめてつけようと思った)、データの正確性が不明なこと、おまけで文章が主観的かつ読みづらい上にデータと文章が分離していない等、あくまで補助資料の域を出ない。
まだまだ続く。旧住所の読みの話がそういえばすっ飛んでいたので次に出そうかしら。
コメントする