かつて、東京のバスには系統番号がなかった。都営は数字だけの番号を採用していたが、周辺の民営各社は基本的に案内で用いるような系統番号を整備していなかった。このまま各社がバラバラに系統番号を採用すれば、利用者にとって不便であると考えられたため、昭和46年に出された「大都市交通におけるバスタクシーに関する答申」に基づき、東京バス協会を中心に、東京都交通局と民営9社(京急・東急・小田急・京王・関東・国際・東武・京成・あと1つは不明)の間で検討を重ね、「ターミナルを示す漢字+数字2桁」という方式に決定し、渋谷や新宿といった大ターミナルでは関係各社が協議して一元的な数字の振り方をすることになった。当時としては、先進的な試みであったであろう。写真は、都営が昭和47年11月から採用することが決まったときの交通局報(昭和47年10月号)に掲載された写真である。なぜか、存在しない番号を例示しているのが面白い。そもそも渋17じゃ新宿駅方面にならないのでは……というツッコミはさておき、この系統番号システムは現在まで使われ続けている。
都営は漢字・数字どちらにも意味をもたせた付番体系となった。すなわち、「ターミナル駅」から「数字の10の位」方面に伸びる路線という付け方(例:田87なら、田=田町駅から、80番台=渋谷方面に向かう路線)をした。詳しくは、当サイトの路線資料館>路線の基礎知識を参照されたい。
リンク先の画像は、車内や案内所などに掲示されていたチラシである。東急では昭和47年3月から二子玉川・渋谷駅発着の系統で番号化が実施されていたが、都営は荒川線を除く都電が全廃されたときにまとめて新番号化することに決まり、11月12日から実施することになった。今となっては懐かしい系統一覧である。
そうなると気になるのは、その昭和47年11月11日の運行をもって廃止された116系統(上野広小路〜駒込駅〜王子駅〜川口駅、国際と共同運行)と、127系統(志村車庫〜池袋駅東口〜上野広小路〜浅草寿町:国際と共同運行)には新系統番号を与える予定だったのか、ということだが……答えは「Yes」である。このときの交通局報の新系統番号表には、116系統は上56、127系統は草57という番号が振られていた。もっとも、「都電代替運行後廃止」と註がついていたことからも、余命いくばくもない系統であったのは確かなようだ。57番は[王57]があるからいいものの、56番は現在に至るまで一度も使われたことはない。ついでに言うと、36番は使われそうになったことすらない。